vsローマ戦 ~神は見ていたんだ~

 


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 11月25日、ディエゴ・アルマンドマラドーナは亡くなった。

 私が生まれる以前に活躍していた人であり、当時どれだけマラドーナという存在がサッカー界を盛り上げていたのかは実際に体感できてはいない。それでも私が幼い頃から「神の手」と「5人抜き」だけは知っており、公園で遊んでいるときに突然手を使い「神の手」をやってみたものである。ただ、それ以外のマラドーナのプレーは大学に入るまで見たことがなかった。話題になるときは薬で捕まることやパフォーマンスの派手さであった。だからマラドーナに対する初めの印象は昔上手かった陽気なエゴイズムの塊のような人であった。

 大学に入り、サッリナポリに魅せられすっかりSSCナポリの虜になってしまった私はこのクラブを応援するにあたって大きな存在を目の当たりにする。それがマラドーナである。30年以上前に突然バルセロナから南イタリアという経済的にも北部との格差が大きい地域にやってきて、2回のスクデット、1回のUEFAカップの制覇などを成し遂げたことがわかった。確かに高校の時の地理の授業を思い返してみれば、北のミラノとどっかとどっかで何とかの三角形とか、その三角形は工業が発展してるとか聞いたことはある。とにかく、今よりもクラブとして大きくなかったナポリという地に当時世界最高の選手であるマラドーナはやってきてナポリという町に数々の希望と栄光をもたらしたのである。

 当時世界最高の男がどのようなプレーをしていたのかという好奇心とナポリの英雄のプレーを観ないのはファンとしてどうなのかという義務感からマラドーナのプレー集を観た。当時のサッカーは今よりも確かに守備の時は整備されていないようであったが、その代わり芝の状態は今よりもかなり悪く、また守備側が何としてでもマラドーナを止めようとするので今では信じられないくらい荒いものも多かった。それでもマラドーナは類い稀なる技術とフィジカルで襲い掛かるDFをスルスルと抜いていき、ゴールを量産していた。衝撃を受けた。こりゃ宗教できてもしょうがないなと思わせられるくらいものすごく上手かったのだった。

 とは言え、一試合通して観ることはこの前行われたローマ戦の数時間前まで無かった。NHKのBSで追悼番組として伝説の試合であるメキシコW杯のアルゼンチンvsイングランドの試合が行われていた。卒論発表が待っていた私としてはローマ戦とマラドーナの試合を観るか迷っていたが、とりあえずマラドーナの試合を観ることにした。そこで観るマラドーナの姿はスーパープレー集で観たものとはやや異なり、近場の選手とリンクを作りワンツーなど使って効率の良い攻めをするような感じだった。また守備の時はちゃんと戻り守備をして、味方がボールを奪ったらすぐに受けれる位置にいた。ただし、昔の映像であったのと髪型が似ている選手が多かったので他の選手とパッと見るだけでは見分けがつかず利き足を見て判断していたので、本当にこのようなプレーをしていたのか自信はあまりない。あまり勘違いをしていないようならば、マラドーナは私が一昔前に思い描いていた王様のような存在ではなくどちらかというならチームにとってリーダーのような存在であったのかもしれない。勝利に導く2点を決めるあたり、本当に神なのかもしれないと感じる。

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 ずいぶん前置きが長くなってしまったが、ここからが本題である。このような試合を見せられたらローマ戦も観ないと申し訳ないなという気分になってしまったので2時間の仮眠を取りローマ戦鑑賞に挑む。ツイッターで更新されているスタメンを観る。今節はバカヨコが前節にレッドカードが出てしまったので試合に出ることができない。その代わりにスタメンになったのは奇しくもマラドーナと同じ名前を持つディエゴ・デンメである。あと気になるのはコロナ明けてからコンディションがそこまで上がっていなかったジエリンスキがスタメンである。そして大きく異なるのは今季は4-4-2や4-2-3-1の2ボランチを採用していたのに対し、今季初で昨シーズンまで使ってた4-3-3を採用してきた。

 いざ内容はどのようなものであったかと言われると正直なところあまり覚えていない。しかし、相手に全くチャンスを与えずにこちらが一試合通して支配していたという非常にポジティブなものであったと思い出せる。

 結果は4-0の快勝であった。クリーンシートで終われたことにはデンメの活躍は欠かせないだろう。他の中盤の選手と異なり、デンメのプレースタイルは一つのリスクを冒してチャンスを作るよりもミスを一つでも無くし失点を減らすようなものである。また中盤の空いた危険そうなスペースにはデンメがいつもいて相手のチャンスを潰していく。このような堅実なプレーが功を奏した。結果的にナポリはジェコに全く仕事をさせず、決定的なシーンを相手に作らせることはなかった。最近では出番が少なくはあるが、去年の冬にわざわざ首位であったライプツィヒから来てナポリを救ってくれたデンメにはもう少し出番を与えてほしいというのが一サポーターの感情である。それにやはりジエリンスキは前への推進力をもたらす選手でありコンディションも戻ってきたのかと感じる。

 得点シーンを挙げれば、ナポリっ子でかつカピタンであるインシーニェが最初にゴールを決め、ファビアンも相手の股を抜くエレガントなシュートを決め、歴代チーム最多得点を決めてるメルテンスも決め、最後にはポリターノがオマージュなのか5人抜きをして決めた。しかもファビアンのゴールの少し前にはマリオルイがサイドバックとして信じられないヒールパスを出している。

 この試合ではナポリというチームにもうマラドーナが宿っているとしか考えられなかった。そう思ってしまうほど好調であったローマに対して内容も結果もマラドーナに捧げる最高な試合であったと私は思う。

 最後に、マラドーナには自分がもたらしたスクデットしか見せることができなかった。しかし、今のチームの状態ならばスクデットを取ることも夢ではないと私は感じる。今季が終わるころにはスクデットを片手に空にいる陽気な神様と共に笑い合いたい。